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るるるるん 三月クララさん編

しばらく前に購入した独立系文芸ユニット「るるるるん」の作品集Vol.2についての感想第三弾。最終回は三月クララさん。

この本は基本的に右側綴じなんですがクララさんの作品は横書きであるため反対側、左綴じで読み始めることになります。これはいっそのこと反対側も何か表紙めいた意匠でもよかったかもしれないですね。

さてるるるるんVol.2の作品それぞれがそんなに長いものではありませんがクララさんの作品「光の中で」はまた4つのパートに分かれています。

4つのパートはおそらく同じ人物と思われる主人公の生活エリア、”Barで”、”オフィスで”、”領土で”、そして”休日に”というサブタイトルがついて最後の”休日に”というのは住んでいるマンション?の部屋が主な舞台。

最初のストーリー”Barで”で映画を観た後バーに向かう描写やバーでの成り行きを読み始めると何かスタイリッシュなシチュエーションでのややドライなストーリーを持ち味とする方なのかと思うんです。遊び人と思われる恋人のあしらい方やバーテンダーとのちょっと予想外のエピソード、そしてタクシーでの夜明け前の帰宅。タクシーの窓から見える光景はいかにも都会的…
そして家に着いて冷蔵庫を開ける。
中に「大事なもの入れ」と呼ばれる金属製のケースか何かがあるのだけれど詳しい説明はなく日々のちょっとした出来事に関連した収穫物をコレクションしているらしい。
この辺りから予想していたものとは少し違う雰囲気が感じられます。

次の章”オフィスで”では突然の場面の変化でしばらくは最初のストーリーとの関連がないのかと思いながらもだんだん同じ人物の勤務先での出来事らしいことがわかります。
面白いのはバーとオフィスはある意味主人公にとって対照的な描かれ方をしていてそれを象徴するかのようにバーではさくらんぼ、オフィスでは梅干しがキーになっています。
同じバラ科の植物の実でありながらその印象はかなり違う。

第3章の”領土で”というのは不思議なタイトルでバーやオフィスという具体的な場所を示す言葉ではないので何か特別な意味がありそう。
内容的にもいちばん意外性というか領土と呼んでいるその場所がなんなのか、かつて何が起きたのか想像するよりないしまた想像せざるを得ない。
ここでも詳細は何も知らされないためにはっきりとはわからないけれどおぼろげながらその起きたかもしれない出来事のことを思いながらさらに読み進めることでこの作品への印象がはっきりと大きく変わるのではないかと思います。
領土というのは自分が獲得したかに思われたが失いつつあるもののことなのか?

例えば悲しみは時間が解決してくれるという使い古されたフレーズがあります。
確かにそうなんだけど全てが綺麗さっぱり消えるわけではなくて何か少しづつ小さな滲みのようなものがなかなか消えずに残っている。日常の些細な引っかかりがその滲みのあたりに薄く堆積して見えにくくしていくけれどその存在を全く意識せずにいられる時はなかなか来ない。

最終章”休日に”で主人公がとる儀式めいた行動はつまりはヒーリングのような、あるいは一種の浄化のためのプロセスなのかなとも思う。
滲みや堆積物を洗い流す効果があるのか無いのか、信じているのかいないのかもわからないけれど。

さて、るるるるんの3人の作家さんの作品を読んで感想を書かせていただきました。
そもそもろくに読者のいないこのブログに掲載する事にどれだけの意味があるのかはわかりませんが何かの折にちょっと紹介などできる時もあるかも知れないし、何より自分のために過去のログとして残しておけばそれもまた役立つ時も来るでしょう。
個人的には最近の人文分野においていろいろな動きが活発化しているという実感があるのでささやかながらその中に身を置いてみたいという欲求もあります。

これを機にシステム的な問題で一度はほとんどデータを失ってしまったこのブログも細々と続けていければ良いなと思います。

るるるるん かとうひろみさん編

先日購入した文芸ユニットの作品「るるるるん Vol.2 冷蔵庫」
右側綴じで開いた場合の二人目、かとうひろみさんの「コン、コン」

小説の形をとる文章という意味ではるるるるんの3人の中で一番実績がある…とどこかに書いてあった気がするけど気がするだけかも知れない。

かなり練られたプロットという印象で描かれる様々なエピソードが終盤に向けての伏線だったり、そうじゃないものもあるけど…って書くとそりゃどっちかだろって思うかもしれないがストーリーの組み立てに必要なディテールと同様に一見関係ないような些細な日常の描写などはやはり登場人物に血を通わせるという意味でも重要ですよね。
そういうバランスがとても良いと思いました。

読みようによってはちょっとホラー?という感じ(ビビるほど怖いわけではない)なのである意味エンターテインメント性も高い分いわゆるネタバレに気をつけなければならないかもしれないけれど、そういう仕掛け的な部分は実は体裁に過ぎないのかなとも思う。
いちばん描きたかったのはそこではないみたいな。
この辺のところは他の作品も読んでみると印象が変わるような気がする。

そしてこの一冊「るるるるん Vol.2」を通してモチーフとなっている冷蔵庫はこの作品中ではさりげなくしかし重要な存在というか重要な存在の収納場所になっています。
主人公の生活の変化に呼応する形で冷蔵庫の中身も変化して中に入っていたもの、入っているものが説明されたりします。

生活の変化と冷蔵庫の中身の変化…
自分自身の一人暮らしの事とか思い出しそうになりますが、遠い昔のことで…

度合いの差はあれ誰にでも「あれは一体何だったのか?」というような経験があったりすると思うんだけどちょっとそういうことを思ったりしました。

これはちょっとそういうことでは済まないお話ですけど。

るるるるん UNIさん編

先日の取寄せ本、るるるるんという文芸ユニットのvol2「冷蔵庫」

3人の作家それぞれの作品がおさめられています。
実はこの本、作品の構成上左右とも表紙と呼べるものになってますが一応右綴じという設定で開いた場合のひとりめがウニさんです。

この方は随分以前からInstagram、Twitterで相互フォローという間柄だったのでその指向や思考や嗜好や試行?などもその片鱗がちらほら確認できた、というかその信用の延長で購入に至ったわけですが。

タイトルは「おいていかれたから」

お話はミドリという主人公のある日の出来事、おそらくはいつも通りの営業的なミーティングとなるはずだった数時間。それが顧客の要望によりいつもと違ったカフェを道に迷いながら訪ねるというところから始まります。

迷いながらもたどり着いたカフェにすでにその顧客は来ていて自分がリフレッシュしたいために早く来ていただけで仕事の内容は後でメールをくれれば良いのでそのお店でゆっくりして行きなさいと言って帰ってしまう。

新横浜という具体的な地名が出てきて駅の工事の描写があったりするリアルさと対照的にこのカフェはとても不思議な場所として描かれます。店内は砂が一面に敷き詰められていてバブーシュ(モロッコの革製スリッパ?)に履き替えて砂の上の敷物に座って過ごす。

このカフェの中での出来事もとても非日常的で読みながら頭の中のビジョンはもはや砂漠みたいになってて天井も無くて…とは言え都会ならこういう極端な内装のお店も存在するのかも知れないけど少なくとも田舎暮らしの身からするとここは意図的にリアリティを欠いた、現実から少しだけずれ込んでしまった場所として描かれているのだろうと思いながら読み進める。

個人的に気に入ったのはそのカフェからの帰り道が、迷ってたどり着いたのに駅までの帰り道はほぼ一直線だったという表現。この身に覚えのある感覚はカフェ内部の不思議と外部の現実のトランジションとしてはとても秀逸、と思うのは重箱の隅かも知れないけれど。

冷蔵庫が出てくるのはやや後半です。冷蔵庫に関する回想と最後に出てくる実物。この冷蔵庫は何かの象徴?とも思うけど、いや身の回りのあらゆるオブジェクトは何かを象徴するために存在しているのではない。意味、意義よりも優先する存在そのものなのだ、ということを象徴しているのかも知れない。

あ、回りくどいのは私です。
小説ではありません。

僕はこの作品を不思議と言ってしまっているけど実は自分の理解力の無さというか読み解くセンスの悪さによって起きている事件に気づけなかったのではないかという少しモヤモヤした感じもあった。
はっきりとは語られなかったけどそこで起きたちょっとしたドラマに気づくべきだったみたいな。
スタイル的には類似性があるわけではないけどスティーヴン・ミルハウザーを読むと時々そういう思いにかられたことがあったな。
いろいろ不思議なエピソードが描かれていたけれど特に何か事件が起きたわけでもなかった、という読後感。
誤解の無いように書いておくと、この作品も面白かったしミルハウザーは短編が好きで時々読んでる作家です。

読書感想文て久々な気がする。
文章で書くのも結構時間かかりますね。これだけでも数日かけて書いてるからあと2作分はいつになることやら。

るるるるん

文芸ユニット「るるるるん」の本取り寄せて読んでみました。

昔はインディーズと言ったら大体音楽活動周辺とか、或いはまあ映画なんかで使われることが多かった印象だけど、今は実は文学の世界でもインディペンデントな活動が盛んなのかも。
というのは先日地元のセレクト書店「ふやふや堂」のオーナーさんとも話してて思ったんですが、やはりふやふや堂さんみたいな小規模の、しかし選書にかなりこだわりのあるブックストアが台頭してきてることも影響してそうですね。
インディーズ文学はなかなか大手の書店では扱わないか、扱っても沢山の本の中で埋もれてしまうかもしれない。
読みたい人が読みたい本と出会えるのは小さなセレクト系書店と言えるでしょう。

さて、るるるるんは今のところ3人の作家で構成されたユニットで、共作するというわけではなくそれぞれが別々に活動しながら時々同じテーマというかモチーフで書いたものを1冊の本にまとめてるようです。

購入したのはそのvol.2でお題は「冷蔵庫」。
vol.2があるくらいだから1もあるんだね、そういえば。

というわけで時折ゆっくりと読書感想文など書いていくかもしれません。
書評、と言いたいところだけど文章書くのが下手なのでやはり読書感想文という感じになってしまうかな。rurururun