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月の部屋で会いましょう

レイ・ヴクサヴィッチの「月の部屋で会いましょう」という短編集を読んでる。
今、何冊かの短編集を並行して読んでる中では進みが遅い方だ。
つまらないからではなくてなんとなく他の本が優先されているだけ。

月の部屋で会いましょう(Meet Me In The Moon Room)というタイトルがとても気に入ったので一番最後に収録されたそのタイトルの作品を先に読んでみた。
というか久々に英語版も取り寄せて最初にそれを読んでみた。
英語得意ではないから細かなディテールなどの読み逃しはあるものと思って読んでみたけど、そうは言ってもそんなに極端に間違えるということもないものだ。
会話とは違って言葉が逃げていかないからじっくり考えられるし。

Paul Bowlesの名前が出てきたりタンジェが出てきたりしてとても嬉しい。
以前ボウルズの作品も英語版にチャレンジしてみた事がある。
ボウルズの小説の日本語訳はもう新品で手に入るものはないのと英語版の表紙ですごく綺麗なものがあって、いわばジャケ買いだったけどそれも短編だったから何作かはなんとか読んでみた。

月の部屋〜のなかで主人公の男性の元に北アフリカで亡くなったと聞いていた恋人から電話がかかってくる。
不思議なお店で再会し「ポールボウルズに会えた?」「ええ、実は会えたのよ」なんて会話する。

こちら側の世界からでていく事のなかった自分と向こう側の世界から帰還した彼女。
「タンジェ?」「タンジェ」というやりとり。
彼女の身にどんなことが起こったのかなんとなくわかる。
とても切ないけど再び心を通わせはじめる場面が抑制が効いていて、ただあたたかいだけではないのがむしろ心に残る。

短いけれどとても良い。