挿絵の描きやすさで言うと、とても描きやすかったです。
多分単純に動物が出てくるせいもあるけど、読んでいてヴィジュアル化しやすいオブジェクトがすぐに目についたことが大きかったと思う。
原稿を送った時点でとても気に入ってもらえたらしくDMでそのことをかとうさんが直接連絡くれました。
その中でかとうさんが扉絵について「植物にムシコナーズ的なものがぶら下がってる?とか、芸が細かい」って書いてて…
これって今明かされる驚愕の事実とでも言うか…
あれ鏡のつもりだったんです。
途中で鏡が入ってないなあって思って無理やり描き足したんですけどあそこに鏡をかける人はいないですもんね。
一応ムシコナーズって事に変更しておきますね。
かとうさんの作品は技巧派というか職人気質、アルチザン的要素が強い印象が僕の中であって、それは前作るるるるんvol.2「コン、コン」やソロ作品集「小さい本屋の小さい小説」を読んでみてもとても感じます。
ストーリーの骨組みのどこにどのように肉付けをするか。そのことで読者はどういう道筋でプロットを追ってくるのか。
それについての設計図があるかのよう。
もちろんそれはかとうさんの特徴というより文章を書く人からすればひとつの方法論としてむしろ正統的なことかも知れない。けれどそのことによってかとうさんの描く不安定な現実、通りすがりに視界の隅に見えた気がしたような、ともすれば気づかずに通り過ぎるだけみたいな世界に読者は無事?到着できる。
「小さい本屋の小さい小説」
”はっきりと思い出すことのできない顔つき”の登場人物が出てくる。
そういえばそんな人に会ったことがあるような気がするけどそれはまさにはっきりと思い出すことはできない。
こういう微妙に共感を感じさせそうな設定もかとうさんらしいと思う。
その”記憶に留めることのできない相手”と一夜を共にしながらもそのこと自体より相手の生活の”鏡の不在”に固執し自らも鏡を見ない生活を実践する主人公。
その後の鏡のない生活は終盤でその理由を知ることで終わりを告げ、「はちまんびきのけもの」というタイトルに込められた意味が読者にも明かされることになる。
このタイトル、すごく良いなあ。
語られたストーリーとタイトルの事が結びついてすごく余韻を楽しむことができる気がします。
相変わらず読後感はすっきりするわけじゃないのに全然別の意味でカタルシスがある。
ところで、今回僕は挿絵制作のため、3人の原稿を本の完成前に送ってもらって一度読んでるんですがその時はどんな物を描くかちょっと探しながら読んだので作品への没入感はほどほどでした。
で、この感想文を書くために改めて読み返して「あれ?」って思うことがあったんです。
みんな気づいているけど言うのは野暮と思っているのか、僕が間違っているのか?と思って念のためにかとうさんに確認したら正解とのこと。
みんなが気づいているかどうかは知る由もないみたいなので「ああ、あれでしょ?」って思う人はかとうさんにお知らせしてみてください。
正解した人には景品が…
ないです。
コン、 コン
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